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肘折温泉
  山形県大蔵村。県北部の交通の要衝・新庄市南西の人口も決して多いとはいえない山間部が多い場所です。この村の中心部の盆地にひっそりと息づく小さな温泉地、肘折温泉郷。『肘折温泉』『黄金温泉』『石抱(いしがかい)温泉』の3つからなるこの温泉郷の中心地、肘折温泉は湯治場としてつとに有名で、東北の『大沢温泉』や『鉛温泉』『夏油温泉』などきら星のごとく連なる温泉ファンなら一度は行ってみたいと感じる趣のある温泉湯治場と比肩される温泉地です。保養目的や観光目的の訪問客が湯治目的の客と同じくらいかまたはそれ以上かもしれないという、湯治需要がある場所です。
  肘折温泉はそんな中、湯治場とはいっても一軒宿である上記旅館群と異なり、外湯巡りが楽しめる温泉街を形成し青森の『温湯温泉』『大鰐温泉』、秋田の『大湯温泉』、福島の『飯坂温泉』、そして同じ山形県内の『赤湯温泉』や『上山温泉』『蔵王温泉』等と同じく東北でも屈指の存在感を示し、全国的に見ても上位にランクされるべき温泉です。そして、更に列記した温泉の中でも当研究所が提唱する、外湯巡りが真に出来る温泉は、複数の共同湯を持つ『大湯温泉・飯坂温泉・赤湯温泉・上山温泉・蔵王温泉」などに絞られますが、飯坂温泉と大鰐温泉は統合源泉故に共同湯ごとの個性が失われ、大湯温泉、上山温泉などは共同湯の数や個性はありますが、湯の個性がやや乏しく、また湯治場の大きな楽しみである共同湯とほぼ同額の安価な入浴料での旅館のはしご湯も数が限られ、逆に温湯温泉ははしご湯できる湯治宿は数軒ありますが共同湯がなく(公衆浴場が一軒)、赤湯温泉は共同湯はすばらしいですが、残念ながら温泉街と呼べるようなものは形成されていない状況です。最後に残るのは『蔵王温泉』と『肘折温泉』、広い東北でも、いや日本全国でも当研究所が最も評価する温泉の内の一つです。じっくりとご覧下さい。



肘折温泉の歩き方
  肘折温泉には現在大きな無料Pがありません。どうもこの温泉は宿泊が先んじて考えられ、車で来た観光客にはしご湯しながら、食事したり、おみやげ物屋を冷やかしたりして遊んでもらおうという感覚が薄いように見受けます。(まあそういう所も昔ながらと言えば、言えるのですが)。しかし、肘折り温泉の北側(東側?)の入り口には『いでゆ館』という日帰り温泉施設があり、ここのPがかなり大きいのでこちらに入浴した上でそのまま置かせて頂くというのが賢いかも知れません。実際どう考えても入浴に関係なさそうな車も一杯止まっていましたので、多分大丈夫です。日帰り湯300円。9時〜20時。 但し便乗するのは嫌だという方は、湯宿・元河原湯前には有料P(一日500円)があります。また温泉街の川を挟んで対岸には駐禁になっていない広めの道路がありますのでそこでもいいかもしれません。
  一応当研究所は湯巡りにはここ(いで湯館)からスタートしますが、肘折は宿泊もお勧めです。だいたい当研究所が下で日帰り入浴を紹介しているどの宿も宿泊料は一泊2食で7千円くらいです。肘折は宿泊客は3つの共同湯に無料で入り放題なので、特に鍵を開けてもらわなければ入れない『疝気の湯』と『河原の湯』は宿泊した旅館で直に鍵を借りれますから便利です。更に更に、毎月26日に宿泊の方は旅館同士日帰り入浴が無料になります。つまり当研究所が下にお勧めする共同湯3つと独自源泉宿5つの合計8つに無料入浴できてしまうということです。『夢のような』企画です。お勧め。
  話を元に戻します。いで湯館から徒歩一分で共同湯・河原湯(すごい裏路地系なので道の脇に注意)その横に湯宿・元河原湯があります。その前を過ぎ更に徒歩2〜3分で肘折の中心、よくTVなどにも出るおみやげ物屋とシブイ旅館がほとんどくっつくようにして連なる温泉街に出ます。ここから若松屋、三浦屋、三春屋、つたやはすべて連続して向かい合っており、そこを過ぎるとクランクを経て、公衆浴場・上ノ湯にでます。疝気の湯は旅館・丸屋さんの裏手辺りになります。


温泉街の風景
  上:肘折でも目をひく宿の一つ、丸屋さんです。特に言葉はいりません。

  左:川を挟んで対岸は路駐天国となっている広いアスファルトの道。以前は当研究所、ここに車を停めていました。しかし、この川の水の汚れはどうしたのでしょう。(平成17年当時)
  一番有名なクランクの路地。テレビなどでも良く取り上げられます。今私が立っている背後に旅館が色々あります。正面左手を抜けた所がいで湯館です。
  ここは朝市でも有名で画像下のアスファルト上にはいっぱい露店が出ます。
  町中にはこういったお店があちこちにあります。
  街角に取り壊されず残っていた郵便局。残念ながら現役ではありませんが、いい味を出しています。この前が上の湯です。
  町中にはこういった足湯もあちこちにあります。これは上の湯公衆浴場前の丸屋さんの足湯。


湯上がりそば
  いで湯館から温泉街に向かわず川を目指すと橋を渡ってすぐに『寿屋』さんが目に入ります。久しぶりに見つけた安く、おいしく、香り立つそばです。屋根の文字がいいですね。
  麺はつるつるしこしこタイプですが、この8月のそばの端境期にこれだけ香るそばを出せるのはすごいと思いました。新そばの時期になったらどれだけ香るのか楽しみです。つゆは鰹が香る辛目タイプ。

  
もりそば(大)=650円。
        (並)=500円。
   板そば
   (大盛り2杯分くらい?)
           =1300円。

  この画像はもり(大)。十分なボリュームです。


共同湯
上の湯   Pから最も遠い共同湯。湯は透明で、これはこの上の湯のみ。比較的大きな湯船でどちらかというと公衆浴場のイメージ。但し、湯底の青い色が美しく、決して軽んずる事なかれ。
  
8時〜18時。200円。(宿泊客は除く)
疝気の湯   コンクリートブロックを組み合わせた比較的大きな直方体型の湯小屋の共同湯。いかにもジモっぽい雰囲気は完全施錠されている事とも相まって共同湯ファンの心をくすぐる物です。湯は鉄分が豊富な薄く黄色く濁ったようないかにも炭酸〜泉といったイメージの湯です。
   
9時〜22時。200円。(近所の「みちくさ」に支払う)
河原湯   温泉街の東の果て、住宅の中に埋もれている湯。ここも疝気の湯に負けず劣らずジモっぽいです。ところが、こちらは施錠がくせ者でなかなか鍵を持っている人に会えないことがあります。なぜならお店がないからです。特にどこにお金を払うとかどこに断ると決まっていないので、気後れする人もでるかも知れません。周囲に地元の方が居たら自信を持って入浴したい旨伝えましょう。頑張っていろいろな人に話しかけましょう。
   
8時〜18時。200円。


独自源泉宿
  蔵王と同じく独自源泉宿が多いと聞いて、そうなるとはしごせずにはいられない当研究所。とりあえず大友屋さんだけは源泉が見えているのを知っていましたので、まず訪問。そこからは旅館の人に『源泉持っている旅館教えてください』と伝言ゲームを繰り返していきました。もちろんこの他にもあるかも知れません。
大友屋   肘折りで一番有名かも知れない源泉。大友源泉。人通りの多い場所にあえて源泉と飲泉場、足湯などがしつらえてあります。
  残念ながら以下の4軒の旅館のように安価な値段では日帰り入浴できませんが、要はここに26日に泊まればいいのです。

    日帰りは休憩付きで1600円から。
つたや   大友さんの前の旅館。大友さんで聞いていきました。こちらの源泉はなんと独自源泉と組合源泉併せて5本も使っておいででした。独自源泉は松屋源泉1号・2号。組合は2〜4号。この上、本館の浴場は『混浴』で何から何まで驚きでした。

    以下4軒 時間要問い合わせ  料金 300円 (共通) 
三浦屋   別府の隠し湯に来たかと錯覚する半地下の小さな浴室を持つ三浦屋。今回の湯巡りではトップクラスに気に入りました。適温の湯は独自源泉の『三浦屋源泉』と組合2号泉のブレンドで長湯向け。その湯が四角い湯船からひたひたとず〜とオーバーフローを続けていました。湯量も贅沢でずっと居たくなります。湯の甘味は重曹のせいでしょうか。
三春屋   びしっと熱い『三春屋源泉』。こちらも三浦屋同様半地下の切石のお風呂で使っていると別府にいるような錯覚を覚えます。甘味で微卵風味、酸味も感じる湯は投入量が圧倒的で一番贅沢な湯船でした。
若松屋   一番Pよりの若松屋。この4軒の中では最も小さな浴室で最初通された時貸し切り湯に特別に入れてくれたのか勘違いしてしまいました。洗い場とカランは大人一人分しかなく、湯船でかろうじて大人2人です。独自源泉は『村井源泉』。鉄味が強く、甘〜い味で適温、ちょっと大分の長湯のイメージの湯でした。きしきしした触感です。



上の湯
  肘折りで一番有名な共同湯。専用の上の湯源泉を使用。大きな湯船に湯たっぷり。
  ここの湯船は底が美しい石の装飾となっており、画像映えします。
  湯口は2カ所有り、右には観音様が立ちます。
   不思議なことにカップが2個も用意してあるのに飲泉は禁止と書いてあることです。まあ、飲んじゃいましたが。鉄甘味卵風味でした。

  ちょっと湯船が大きいことを除けば、ここも別府の共同湯に通じる所があります。カランがほとんど無く、浴室には湯船と洗い場のみ。湯は注がれ溢れて側溝へ。このシンプルな構造が共同湯の真骨頂です。


疝気の湯(下の湯)
  丸屋さんの裏手をうろつくとあります。中の成分表には『上の湯』に対して『下の湯』という表記になっています。どちらが正しいのでしょう?
  入浴券というかとにかく電子ロックがかかっていますので、一緒に来て頂いて鍵を開けてもらわないと日帰り客は入浴できないのです。(宿泊の場合は鍵を持ってこられます。何となく優越感。)
  全体像を見るとジモっぽいです。こういう浴場に200円で入れるというのは感謝感激です。

  湯は大分・長湯に似た感じ。湯船の縁はいきなり垂直に切り立ち屋根は妙に高いのに、人の居るスペースは妙に狭いという圧迫感がある構造です。



河原湯
  Pから一番近い河原湯ですが日帰りの場合一番入り難くもあります。だいたいここは組合そのものが日帰りを認めているのか自体疑問です。それほど入りにくい空気があります。
  ここも電子ロックがありますのでとにかく鍵を開けないと話になりません。
  更に圧迫感がある浴室三方を垂直に切り立った壁に囲まれています。限りなくジモです。
   水を入れるほどの温度ではないと思うのですがなぜか浴槽専用の蛇口がありました。



独自源泉宿



大友屋
  土産物屋が集中しているクランクから徒歩30秒から1分でここまで来ます。
  通りを歩けば誰もが気づく大友屋源泉。蓋の下から御湯がこんこんとシミだし流れていって居ます。
  このすぐ横には足湯もあります。

  ただ残念ながら上記の通り、ここは日帰りはその日の都合で受けたり、受けなかったり、ファジーです。


つたや
  大友さんの真ん前、2階建てのまるで江戸の旅籠のようなつたやさんデス。
  
  ここに5本の源泉をどのようにつかっているか説明があります。


    下:浴室全景。混浴です。奧の湯船は女子脱衣所の真ん前に、手前の四角い湯船は男子脱衣所の真ん前にあります。
   奥側の浴槽はびしっと熱い塩味カルシウム。多分こちらが組合源泉なのだと思います。

  手前の四角い湯船はぬるめの炭酸泉と熱めの湯を細く絞ったものが入れられています。下に炭酸がかすかに残る甘味でこちらは重曹泉の特徴が出ているのかなと感じました。浴槽全体にはぬるめの長湯向けの温度になっています。左の白い龍は壊れていました。


三浦屋
  三浦屋と三春屋は大友さんの側に並んで立っています。最初に三浦屋さんを教えてもらったのでそちらに行きました。そして浴室に通されてびっくり!入って即左が浴室、後ろのよしずの外は私が今立っている通りなのです。
  ここは別府の自家泉や隠し湯に慣れている人は完全にトリップできる事でしょう。半地下の浴室は湯底が道路からマイナス1bくらいでしょうか。
  この画像は我ながらほれぼれする出来でした。三浦屋さんの浴室と源泉の魅力をかなり伝えられているのではないかと思います。湯はほんのり甘味で長湯向けの丁度良い適温、もちろん後先考えずにだらだらしてしてしまいました。だいたいこの日一日肘折りで終わってしまったのですから。
  成分表。  


三春屋
  こちらは三春屋さん。三浦屋さんとほとんど変わらぬ造りの上、半地下の落差はこちらの方が大きく階段ジモといってもいいくらいです。ところが隣り合ってはいてもやはり温泉の個性は違い、こちらの湯はまずびしっと熱く長湯には不向き、更に同じ甘味でも微卵風味で、後味に酸味も残りました。
  
  湯を飲み、浸かり30秒ほど我慢し、洗い場でトドる。これを5セット。上がり湯はおろか、水道の蛇口さえなく汗が自然にひくのにかなり参りました。
  なんという美しい湯面。透明なぷるぷるゼリー(それもお酒の産地にある吟醸ゼリー)が型に流し込まれたようにも見えますが。でもこんなゼリー食べたくない?
   湯口からは絶え間なく湯が注がれっぱなし。その湯が湯船の縁を越えてさらさらとオーバーフロー。こうでなくてはいけません。基本にして最上級でもある形。


若松屋
  若松屋さんはおみやげ物が集中するクランクのすぐ隣に立っています。
  ここは若松屋さんの足湯。
  浴室は本当に小さく、家族湯にぴったりですが、男湯と書いてありました。でも、日帰り客用に入り口に近く作ってあって、他に宿泊客専用の湯船があるのかも知れません。
  湯は湯口の段階でかなりの適温。鉄味が濃く、甘味で触感はきしきしする感じでした。



おまけ
石抱温泉
  いで湯館Pとは完全に反対側になる方向に向かい標識に従って山中に(本当に砂利道です)車を進めると肘折りのどの源泉とも違う湯が湧いているポイントに出ます。湯は自噴していて完全にほったらかし温泉ですが、きちんとした湯船がしつらえてあり、露天共同湯の体を為しています。名称の由来は炭酸成分が強すぎて石を抱えていないと浮かび上がってしまうからということですが、そこまでかどうかはご自分で確認してください。   しかしやはりきちんと管理されたお風呂ではないので(温泉街のとある旅館の所有物なのですが)概ね清掃が行き届いていますが、運が悪いと苔だらけでぬるぬるということもあると聞きます。まあ、元々野湯系の温泉は根本から好き嫌いが分かれますので行かれた方は頑張って入浴してみてください。夏場に丁度良いくらいのぬるめの適温湯です。適当にアブも頑張っています。この画像は10月頭です。
       
24H。無料。


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