安楽温泉郷
  日本の温泉文化を語る上で欠かせない要素を持つ湯治。温泉による湯治は古くから確立されてきた独特な文化風習が残り、その合理的且つ風雅な趣には感心せざるを得ません。そんな温泉湯治の中でも日本屈指の魅力を持つのがここ安楽温泉郷なのです。
  安楽温泉郷は湯治向きの温泉としては当研究所一押しの温泉です。飾らない旅館街、5軒の旅館がそれぞれ入浴料を200円に設定していて、いわゆる外湯巡りの楽しみが旅館に入浴することによりできる事、どの旅館に泊まっても考えられないほど宿泊料が安くまた旅館の方が親切でまた来たくなる事、美しい渓流が流れ山も近く自然が濃いのに買い出しなどの点においても市街地が近い事など、湯治において一番重要視される温泉が効くかどうか(=すなわち泉質の良さ)は言うまでもなく、数え挙げたらきりがないほどの魅力を安楽温泉は備えています。
  また、旅人の視点で言えば東京からのアクセスの簡単さも大きな魅力としてあげられます。それはこれだけの自然環境を備えていながら、鹿児島空港から実走行距離でわずか10qもないということです。これは東京を18時55分の最終便で飛び立っても、空港でレンタカーを借り、宿に十分入れるという事を意味しています。当研究所は実際にこのプランで宿泊させて頂いたことがあります。東京の18時頃の山手線のラッシュを抜け、21時過ぎには天降川の瀬音を聞きながら、安楽温泉の湯に浸かっている。この夢のような脱日常感を常に味わえるのが空港からのアクセスの良さなのです。

   ★日帰り入浴料金は5軒とも共通で一軒につき200円。
     時間は概ね朝から夕方まで。(直接声をかけて入浴可能かを聞きます)
     但し当研究所、温泉利用は日帰りではなく、5軒中4軒に宿泊しました。
安楽温泉全景


湯治温泉文化
  湯治について少し述べます。湯治は湯に浸かって体の「治療をしたり」「長期的な骨休みをしたり」することを言います。現代ではあまり湯治と言う概念を一つの「くくり」で縛ることは出来ませんが、昔ながらの湯治のイメージというとやはり、「素泊まり」「布団持ち込み」「自炊」「家財道具のレンタル」などと言う言葉が浮かびます。現代湯治では本当に「何もしたくない」という側面から、宿側に食事の提供をしてもらったり、布団の上げ下げをしてもらったり、というサービスも普通になっており、それに伴って料金も上がりつつあるようです。しかし、昔からの湯治場・すなわち東北の「大沢温泉」「温湯温泉」「大鰐温泉」「鉛温泉」「肘折温泉」、九州の「鉄輪温泉」「妙見温泉」「湯川内温泉」などは湯治専用の「湯治棟」を持ち、長期宿泊に対して料金を少しでも安くという需要に応えています。こういった湯治棟では素泊まり料金が「1500円〜3000円」程度、自炊にはガスの使用料が「3分=10円」、布団が一枚「300円」、こたつが一台「500円」、テレビが一台200円、またテレビの視聴料が2時間「100円」など自分の必要なものに応じて料金が加算されていく方式がとられています。(料金は平均的な額の例であくまでも参考程度に)。自分で布団を持ち込み、素泊まり1500円の部屋に泊まり、自分の持ってきた食材を共同キッチンの冷蔵庫(使用料無料)に詰め込み、毎日自炊し、テレビも見ずに湯に浸かり、のんびり本など読めば、一月という単位で宿泊しても、月5万円ほどの料金で毎日温泉三昧の生活が送れる、これが湯治温泉に宿泊する醍醐味ではないでしょうか?


※下記のレポートは2004年訪問時のものです。料金などは訪問前にご確認ください。

安楽温泉の旅館
みょうばん湯
川下から2軒目
  安楽温泉で当研究所が最もお勧めする湯治宿。湯、料金の安さ、安さに対しての質、宿の方の人柄、部屋のこぢんまりした落ち着き加減等全てのバランスがとれています。こちらのお宿は宿泊料が2200円ぽっきり。この中には布団無料・部屋付き冷蔵庫使用無料・こたつ無料・テレビ使用料無料などの数々のサービスが含まれ、温泉にも24H浸かれます。高台に位置する宿の建物からは眼下に天降川が見晴らせ、部屋付きの冷蔵庫にお気に入りの食材・ドリンクを入れ、宿入すればその日のユートピア=桃源郷が約束される極上湯治宿です。
堺田温泉
川下から4軒目
  もしかしたら、安楽温泉で一番予約がとりにくい、つまりは人気が高い宿かも知れない堺田温泉です。東京からかける予約の電話はとにかく何時かけても「一杯です」のつれない返事。2度鹿児島に出かけ、出先からも一日おきくらいに電話して5度目くらいの電話でやっと予約出来た所です。バラエティ豊かな湯船がそろうこの温泉はその湯質の効能の高さも地元の方が盛んに褒めておられました。宿泊した4軒の中では唯一共同キッチンではなく部屋付きのキッチンでした。素泊まり一泊3000円。こたつ無料・テレビ無料・部屋付き冷蔵庫使用無料・部屋付きキッチン。
本家 塩湯
川下から3軒目
  大きな使いやすいキッチン、そのキッチンには冷蔵庫が3台、大きな打たせ湯に、内湯浴場が2,山側に露天、その他寝湯、砂蒸し湯などなど、贅沢な設備が印象的だった、塩湯は素泊まり一泊2500円でした。(但し連泊のため2泊で5000円をわり算しました。一泊だともう少し割高かも?)
鶴の湯
一番川下
  5軒中唯一国道から見て川側に立地する鶴の湯です。当然部屋からの眺めも国道を挟まず、眼下は一面天降川の美しい清流が占めていて、川音が心地よく、宿泊の際には部屋からの景観が一番山の温泉らしい旅情緒も味わえる温泉です。浴槽も当研究所経験の中では一番大きく且つ素朴なもので、源泉投入量から来る湯のたっぷり感と掛け流し度は安楽最強ではないかと思います。また、川沿いの強みを生かし、露天は一番川近くにあり、打瀬も川風を浴び、川音を聞きながら出来るものです。一泊2800円
佐藤温泉
一番川上
  堺田温泉と共に最後の最後まで宿泊予約をさせてくれなかった(別に嫌がらせを受けたわけではありません)宿。当研究所ここのみ宿泊の予約が入れられず、そのまま意地になって「宿泊出来るまで日帰り入浴も行かない」などというモードに入ってしまい、結局ここのみ内部の画像がありません。未湯。


みょうばん湯
  背後が斜面になっている地形を生かし、宿泊棟が高台にあるみょうばん湯。当研究所は手前から2番目の部屋に宿泊しました。
  Pは屋根付きで大荷物を降ろす時も雨など天候の影響を受けず便利でした。
  露天と内湯で湯の感じが違いました。もしかしたら別源泉かもしれません。内湯の湯は「鶴の湯」さんの湯と似た感じでした。また露天の湯は犬飼の滝の無料露天「和気の湯」に似ていました。   この内湯は24Hなのであえて、貸し切りをねらい夜中に入りにきました。夜、一人で明かりをつけ、静かな湯船にじっくりと体を沈めるとなんとなく「草津温泉」に居るような気になりました。


堺田温泉
  堺田温泉です。こちらに伺い、更にすぐ隣にある「塩湯」さんも見てようやくわかりましたが、どうやら安楽温泉ではほとんどの宿が2階部分の宿泊棟の下にPを設け、屋根付きとしているようです。
  多くの浴槽がある内湯。一つの浴室内にいろいろある点では安楽で一番かも知れません。主浴槽の源泉投入量は湯口が渓流のように見えるくらい多く、必然オーバーフローも圧巻でした(下の画像・右上)。
  こちら隅にあった「ちい風呂」。温度が低く設定され、やや浅めに作られていて、主浴槽の入浴のインターバルに骨休み的に作られているようでした。何となく温泉バカ的な雰囲気が気に入り、好んでここにいました。   この右側はかなり深かった様に記憶しています。この他、寝湯、砂寝湯、蒸し湯、水風呂などがありました。


本家 塩湯
  生憎と雨が落ちてきてしまいました。鹿児島はずっと晴天続きでしたが、初雨です。しかしこちらもPは屋根付き、本当に便利です。
  塩湯はもしかしたら堺田温泉よりもいろいろな湯船があったかもしれません。しかし、こちらは「露天」「砂湯系」「内湯と打たせ」がそれぞれ別棟になっており、ネックとなるのは移動の際、必ず一旦着衣しなければならないという点です。これは好みが分かれるところだと思います。
  打たせ。秀水湯のような立派な打瀬でした。
同じくうたせ。
  露天風呂の入り口。ここが一番のお気に入りでした。
  露天。滝のような源泉口。ここで温泉バカ画像を撮らなかったのは今でも不思議です。
  人がいないとこんな感じ。
  湯は一番緑が濃い感じに見受けました。


  下:内湯。大きな湯船なのにオーバーフロー画像が写しやすかったです。
  湯船の縁に美しい湯のオーバーフローが写せました。   ここ塩湯もみょうばんと同じで複数の源泉を使用しているのかも知れません。


鶴の湯
  こちらは当研究所が生まれて初めて泊まった鹿児島の温泉です。夜遅くにつき、翌朝も早くに出発したので、ろくに画像が写せませんでした。   朝6時前に湯船に行くと湯を溜めている最中でした。もしかするとここ鶴の湯は24H入浴可能では無いのかも知れません。右に見えている黒い部分は開け放された扉で、外は露天と川です。













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