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粟津温泉総湯
  石川県小松市にある粟津温泉は、当研究所の千年温泉のコンテンツにも収録されているとおり、奈良時代にはすでに利用されていたとされる気が遠くなるような歴史ある温泉地だ。ここには更に、ギネスブックにも登録されている世界最古の旅館(法師)もある。ことほどさように1300年前に発見されていた自噴温泉がいかにすばらしいか、又どのような工夫・意匠があるか、当研究所にとってのサプライズがあるか等々、いく前からの期待は近年では珍しいほどであった。
  ところで、石川県のいわゆる“総湯”と呼称される共同湯は最近立て替えが相次いでおり、金沢市の湯涌温泉は最近新築し、加賀市の山代温泉は来年の夏に完全に新築移転する予定になっている。そして、粟津温泉の総湯もなんと我々が訪問する一週間前に再オープンしたばかりであった。なので、ここで使用する画像は新施設のもののみとなる。
  期待が大きすぎたのか、はたまた冷静に見てもやはり不満があるのか、正直粟津温泉の共同湯に関しては、最近のいろいろな新しくなった施設(特に別府は優秀である。改装して新しくなっても、完全新築でも、新しい施設には新しいなりの感情移入ができるものばかりである)をそれなりにみた上で、もう少し工夫しようがなかったのかという思いだけが残った。当研究所、基本方針としてマイナスコメントは差し控え、本当に×と思ったら掲載しないようにしているのだが、さすがにこれだけの歴史ある温泉は掲載を見送るのも悲しいし、共同湯研究者の一人として、他の温泉地の「大湯」「元湯」を見比べてきた中での、辛口評価は仕方のないことかと思い、掲載する。
  まず、一番気になったのは、浴室に充満する消毒薬のにおいだ。温泉の効能で一番効くというか効率がよいのは肌から浸透する成分であろう。しかし、それだけではないはずである。人は五感を総動員してものを感じようとする。つまり温泉の香りも含めてその他の要素も欠かせないものなのだ。それは入浴前から始まっている。浴舎の周りですでに洗面器が湯を汲む、洗い場にはねる音を聞き、浴舎周りで湯の香り(硫黄であったり、石膏臭であったり、モール臭であったり、アブラ臭であったり)がしているとやはり温泉に入浴する(またはしている)実感というものが感じられる。温泉に色が付いていれば、視覚が触覚をサポートするし、温泉独特の香りがある場合には、それをかぐ事により、嗅覚が触覚をサポートするし、湯がつるつるする、きしきしするなど直接感じるし、湯口から湯が注がれる、または底から投入されている場合には、湯が注がれる音、湯があふれる音、こぼれる音から温泉を感じるし、今まで挙げたものが温浴効果を相乗して高めるのではないだろうか?
  温泉は病院ではないし、プールでもない。殺菌が必要なら、他の施設でもやっているように、温泉成分をできるだけ損なわない様な方法か、入っているのが極力わからないような消毒薬を選択することも可能なのではないか。何より社会的にこれだけ循環・濾過に対して関心が集まっている中で、消毒薬のにおいがするだけでそれを連想してしまうという消費者の心理を知るべきだと思う。
  第二に、周囲の山中温泉、山代温泉、片山津温泉などは皆それに見合う総湯を持っている。それらに比して、粟津の総湯は間の取り方、スペース効率、浴室内のバランス、湯船の意匠などなど、新しく一から作り直したものとしては、本当に無個性に過ぎる気がする。周囲に「山中温泉」という良い見本があるし、遠く目をやれば、やはり大湯としての存在感を期待される共同湯でお手本となるのは、たとえば別府温泉の共同湯などは良いものがたくさんある。古いものであれば「竹瓦温泉」「不老泉」、新しいものであれば「浜脇温泉」などがあるし、更に四国道後温泉の本館なども大湯にふさわしいイメージだ。北陸に近い場所であれば、長野県の野沢温泉の「大湯」、渋・湯田中温泉郷の「角間大湯」などお手本となるであろう。大きいなら大きいなりの、小さいなら小さいなりの魅力というものもある。
  第三に、地元の毎日入りに来る方のための生活温泉としての視点と観光客相手の観光の目玉としての日帰り湯という存在と、2つの顔を持つであろう施設が、どっちつかずに中途半端になってしまったことが一層「もうちょっと何とかならなかったのか」という不満につながっているのではないかと思う。
  この問題は後から努力で補える問題ではない。(もう作ってしまったのだから)。エールを送りたいのだが、もう一度来たい!!と思わせるような施設とはちょっと異なっているのである。非常に残念だ
利用時間=8:00〜22:00 毎月8日18日28日休み  利用料金=420円


こちらギネス認定世界最古の宿「法師」です。一度は宿泊してみたいものです。 

2008年8月訪問しました。
  外観からは余裕が感じられ、とにかく浴室を見るまでは期待感は続いていた。   こぢんまりした感じのエントランス、この雰囲気なら湯船から直接湯を汲む純然たる「共同湯スタイル」も良いと思いました。
  懐古スタイルです。   ここもいい感じでした。
  広い、天井が高い、伸びやかで明るい休憩スペースです。でも外から見た湯小屋風の湯屋作りっぽい部分はここだったのです・・・・・。   ここにこんなスペースを取っておきながら・・・・。
  脱衣所もそれなりに広いのに・・・・。   シャワーは下の通り、片側3基ずつ、計6基しかありません。
  湯船も何となく中途半端な大きさ、折角明かり取りの窓があるのに、五分の四を板塀で覆ってしまって真っ昼間なのに明かりをつけています。   敷地もかなり広かったのに露天もなし。そもそも、浴室にスペースを割くつもりがないなら、湯船はもっと小さくてよいと思います。
  逆に観光客もと考えているなら、周囲の加賀温泉郷の温泉のように浴室を広く、湯船も大きく、シャワーもたくさんつけたらと思います。   終始「塩素」が香っていました。恐らく掛け流しだと思うのですが、もう深く考えるのが面倒になっていました。
  この段階では「石川県はこういうものなのか」と思っていたので、笑っていますが、この次に山中温泉の菊の湯へ行き、感銘を受けました。   そう、全国に誇れる共同湯・公衆浴場がきちんと身近にあったのです。



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