東北 麺ロード


  東北は奥が深い。温泉、人、食全てにおいてだ。なかでも当研究所が目をひく物の一つに麺がある。当研究所のそば好きは別コーナーでもお伝えしたとおりで、こうした「そば」「うどん」「ラーメン」といったメジャーな麺は直球版を極めても奥が深いのだが、その変化球版や完全に一線を画す麺類など実にユニークな存在と出会えるのが東北なのだ。
  このコーナーでは東北の他に類を見ない麺文化を紹介する。



岩手県  「盛岡冷麺」
お店は「食堂苑」・・・盛岡城から徒歩3分。
 
  東北麺文化を語る上で欠くことの出来ない存在の一つが「盛岡冷麺」であろう。言わずと知れた冷麺は朝鮮半島に起源を発する韓国料理であろうが、ラーメン同様完全に日本文化に沿うように独自の発展を遂げた。今や全国どこでも食せる冷麺だが、名前に「盛岡」を冠する物はやはりここ盛岡でないと口に出来ない。(ちなみに当研究所、岩手県内の会社が作っている袋入りの冷麺を東京で何度か試しているが麺の感じはかなり近い物がある気がする。)
  盛岡冷麺の特徴は麺がでんぷん質であるということである。この麺は茹でると実に独特なしっかりとしたしこしこ歯ごたえになる。また、冷やしたおつゆも徹底して油を取り除き、冷やすことによって寄りおいしく感じるよう工夫されている。
  
  又、具はお店によって多少違いが見られるが、やはり、「カクテキ」「キュウリの甘酢漬け」は欠かしたくない。この二つは実に麺とスープに合うのだ。お肉はチャーシューの店もあれば、このお店のように「和風ビーフジャーキー」の様な物をのせている店もあり、このみによる。未体験の方は是非お試しを。皆に知って欲しい味です。

  
余談ですが、冷麺と言えば焼き肉がつきもの。この「食堂苑」も焼き肉の店ですが、こちらの「特選カルビ」は日本一おいしく、安く、ボリュームがあると断言します。右の画像はランチタイムのサービス品。肉は大きなカルビ肉が6〜7枚で通常1050円なのですが、ランチタイムにはサービスで画像の4品が無料で付きます。このお店のたれはすき焼きのたれをもっと濃くしたような甘いうまみのあるたれなので、溶き卵につけると丁度肉だけでおいしく、そのまま食べるとご飯と合います。


山形県  「冷たい肉そば」
お店は「いろは」・・・天童市より国道287号。347号とぶつかる辺りの国道沿い。
 
  東北麺文化は冷たい麺が多い。ここ山形県河北町の冷たい肉そばも本当に個性的だ。正直最初はとまどったが、盛岡冷麺同様冷たい鶏だしを油をぎりぎりまで漉しとって飲用にするとえもいわれぬうまみと香りが感じられる。

  左は国道沿いのいろはの更に支店の物。河北町は冷たい肉そばが浸透しており、通りのあちこちに看板が見られる。
  
  ここで言うところの「肉そば」の「肉」とは「鶏」のことで、通常肉そばで言うところの「豚」の味もはしなければ、豚肉も入っていない。手打ちというより手延べ麺のような断面が丸い日本そばをどんぶりに盛り、常温の鶏だし(しょうゆ味)をひたひたに注いで、その上に鶏の照り焼き風の薄切りを数枚のせた物が右の画像だ。
  画像は大盛りで
600円。かなりの大食漢でも満足行く量。私はつゆをのみきれませんでした。 


秋田県  「十文字そば」
お店は「丸竹食堂」・・・町役場そば。
 
  またしても冷たいそば。しかし、このそばは実際には和風の味付けなのだが、中華麺を用いており、ラーメンと言って良い物のような気がする。
  十文字町はよほど秋田県というか東北に精通している方でも知らない方が多いと思う。場所的には鎌倉で有名な「横手」の下の方なのだが、横手も全国的には弱い気がする。更にこのすぐ隣には同じ麺類の有名どころ「稲庭うどん」の本場「稲川町」まであり、一層影が薄くなっている。
  
  しかしこの十文字そばの独自性は口にしてみなければ絶対にわからず、また口に合えば病みつきになり2度3度と食したくなるのです。
  その内容はというと、まず麺はほぼ間違いなく手打ちの中華麺。しかもその細さにおいては他に類を見ないもので、当研究所今まで入ったラーメン屋の中では最も細い麺となっている。つゆは概ね鰹だし、軽いしょうゆ味で最後までおいしくごくごく飲めるうまみの強い物となっている。十文字町には十文字そばの店が3軒有り、それぞれ特色があるらしい。お店により麺の量が調整でき、右の画像は「丸竹食堂」最大ボリュームの「ダブル」というサイズだが、お店によっては「トリプル」まであるらしい。十文字そばを扱う店は全部3軒。のどごし良い細麺を一気に「ずず〜」とすする快感は病みつきになること請け合い。一度お試しあれ。

  



山形県  「大石田そば」
お店は「七兵衛そば」・・・国道13号を基点に村山市より県道36号を経由し次年子(じねご)地区へ。
 
  山形県の最上川三難所そば街道は随分有名になった。特に「あらきそば」は全国ネームとなりつつあり、一度は行きたい場所となりつつある。しかし山形は丸ごとそばの県であり、実は信州にも劣らない「そば王国」なのだ。県内のあちこちにそば街道をうたうところがあるが、最上川三難所そば街道を有する村山市のお隣、大石田町にも「大石田そば」を掲げるそばや群がある。基本的に地元大石田でとれるそば粉を使用していることが特徴で特に味や麺に統一性があるわけではない。そういうわけで、大石田そば自体がユニーク麺と言うわけではないのだが、ここでご紹介する「七兵衛そば」は当研究所のそば体験のなかでは間違いなく日本一の「おろしそば」の店である。
  
  基本的におろしそばというと「ぶっかけ」というカテゴリーが多く、その味は大根の存在感が感じられないことが多く、また大根の存在が大きすぎると今度は辛いばかりで、せっかくのそばのそこはかな香りが吹き飛んでしまうものとなる。
  ところが、ここ「七兵衛」のそばは右の画像の一番下のそば猪口をご覧の通り、おろしと言っても大根の絞り汁のみをつゆで割って使うという物。その味は大根が香りがぷんぷんとし、適度な辛みと苦みがありながら、つゆのこれまた強烈な鰹だしの香りが全く負けておらず、そこに下の画像のやや田舎そば風のそば粉の香りがぶんぶんする麺とあいまって、三位一体、いや、それぞれの香りが順番に味わえる極上のそばとなっている。
  このお店、県外にもすっかり知れ渡り、実は駐車場はいつも車のナンバーの博覧会の様な状況だ。人気の秘密は上記のそばの味だけではなく、上の画像の3つの薬味(季節によって変化、今回は大根の甘酢漬け、白菜の浅漬け、きくらげ)が食べ放題、更におつゆも左の画像のそば椀もお代わり自由(食べ放題)で、なんと1050円ぽっきりと言うところにある。はっきり言ってここは「超お勧め」の店だ。
  


秋田県  「稲庭うどん」
お店は「ほった食堂」・・・子安温泉温泉街内。
 
  秋田県の稲庭うどんは全国に数あるご当地うどんの中でも希有な存在だ。このうどんに匹敵するのは西日本でチャンピョンに君臨する「讃岐うどん」だけであろう。
  稲庭うどんは秋田県の内陸部、ほとんど宮城県との県境の稲川村に伝わるうどんだ。その技は手延べの芸術品とも言える物で、つい最近までなんと一子相伝(北斗神拳以外では初めて聞きました)だったそうです。一子相伝とはたとえ血がつながっていようといまいと、秘伝を伝えるのは弟子の中で只一人だけ。その他の修行者はあきらめるしかないと言う厳しい物です。現在でも皇室献上品ともなっているこの麺は、細麺でありながら、つるつるしゃっきりの中にもちもちとした食感が感じられる希有な物だ。つゆはしょうゆベースで薄味、ごくごく飲めるタイプだ。
  


青森県  「しじみラーメン」
お店は「ドライブイン 和歌山」・・・青森県13湖沿岸。
 
  青森県にはシジミの産地が目立つ。中でも有名なのは日本海川の津軽半島の付け根に位置する13湖周辺だ。このシジミラーメン、ラーメンというのは中華麺を使っていると言うことだけで、実際につゆはシジミの味がすること以外は何ともうまみに溢れる和風とも中華風とも区分できない物だ。
  


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